大 賞

【愛知県知事賞】     愛知県日進市  山本 令子
ランドセルには内緒話がよく似合ふ赤、茶、ピンクが坂の途中で

【蒲郡市長賞】      愛知県新城市  梶村 京子
悟ったか諭されたのか梅花見る子がもう言わぬ転職願望


特 賞

【愛知県教育委員会】   広島県広島市  熊谷  純
新しき動詞をあまた生みだして花のあはひにをさなは遊ぶ

【中日新聞社賞】     愛知県安城市  遠山 敬子
多数派にならぬ私を閉ぢ込めて昇降機はゆつくり白昼を降る

【中部日本歌人会賞】   岐阜県美濃市  高井 須磨子
肩の痛み和らぐけふは思ひ切りキルト広げてアップリケ縫ふ

【蒲郡市教育委員会賞】  愛知県蒲郡市  鈴木 憲治
地下鉄の出口をけふはまちがへて見慣れぬ景色の街にとまどふ

【蒲郡市文化協会賞】   宮城県石巻市  大和 昭彦
売りものとなりて今日より檻に棲む仔犬いつぴきに日が暮るるなり

【蒲郡市観光協会賞】   愛知県大府市  清水 みや子
ばあちゃんに似合う図柄を選んだとミシン目蛇行のエプロン届く

特別賞

【郡上市長賞】      兵庫県明石市   森永 理恵
「大学やめた」とぽつり友が言い聞き返せぬまま映画がはじまる

「高岡市長賞」      広島県大竹市   赤瀬 勝昭
きびきびと交通整理の旗をふる女の耳にピアスがひかる


選者賞

「島田修三 選」     神奈川県厚木市  北村 純一
ひらがなのような気分で徳利の林つくって月と飲む酒

「栗木京子 選」     埼玉県所沢市   山名 聡美
「来年はわしァおらん」と言われつつ祖母がちぎった餅をまるめる

「小塩卓哉 選」     千葉県流山市   森  弘子
初春の母は微笑み指先にひかりを集め編物しをり

「神田あき子 選」    愛知県日進市   柳田 南海子
徒然に亡母の句集を繙けば私の知らぬ女現る

「井野佐登 選」     神奈川県相模原市 河野 真理
違うけどこの掌もあたたかいそれだけでもうよしとしようか


 

入 選

ひらがなで書き留めし歌懇ろに漢字当てゆくひと日の終りに  齋藤とし子

かたわらに声なく夫座り居るただそれだけの日々のなつかし  鈴木しまえ

農業を継ぎたる息子さつそうと軽トラに乗る長靴はきて    太田 文子


奨励賞

「いつまでも私をあてにしないで」と夜間救急に媼の声する  石田 文子

手術日は三週間後亡き母の生日と決めこころ落着く      加藤芙美代

洗い上げ笊に水切る白ネギの何時しか窓の明るさに立つ    田邊 節子

秋の野を歩めば草の実まとひつくひつつき虫といふ名もありて 中村 文子

毎年に寒さわが身に堪へつつ朝まだ暗き工場に立つ      夏目 冨美子 

この冬も亡き父の湯たんぽしのばせむ母の蒲団のその右脇に  水野 絹子

離り住む子よりの電話に傍らの妻は耳よせ共に聴きたり    吉見  宏

   (※入選・奨励賞については、文協会員のみの掲載です。)
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